田園風景の中に、割と立派な駅舎がポツンと存在する。
近年でこそ、周囲にいくつか建物はできたが、かつては「なぜ、こんな何もないところに駅を作ったのだろう」と不思議に思えるような謎駅であった。
あまり縁が生じることのない駅だが、稀に何らかの用事が生じて、下車したことは数回ある。
そのたびに、ガランとした駅舎内にある、いつも閉まっているカレー店の前を通りすぎる。
看板には「おいしいカレーの店 金のスプーン」とある。
営業日は平日のみ。
平日に伊川谷に来る機会はまず無いので、私にとっては「幻のカレー店」であった。
しかしこのたび、ひょんなことから、平日に伊川谷に行く機会を得た。ようやく幻のカレーを食べることができるぞ。
おお、「金のスプーン」開いているよ。初めて見た。
お店に入ると、いきなりレジがある。事前支払い方式のようだ。
しっかりハラは減っているので、「ビーフカレー大盛」とアイスコーヒーのセットを注文する。850円(税込)。安いな。
待つことしばし。出てきました、幻のカレー。
見た感じ、いかにも、まっとうなビーフカレー。
そして、結構なボリュームだ。
食べてみると、まさに直球。
真中高め、130km/hのストレート。
食欲を思いっきりフルスイングや~!
最近個性的なカレーを食べてきたので、この真っ正直さはかえって新鮮。
ビーフは赤身の角切り。
高級ビーフカレーのような、大きなカタマリではない。しかし、四角いお肉が、コロコロ、コロコロ、いくつも入っているよ。
真っ白なごはん、ややとろみのある、酸味の効いたルー。
付け合わせは、これまた定番の真赤な福神漬け。
なんだか、うれしくなる。
スタンダードの安心感。
それが、この決して乗降客の多いとは言えない(はっきり言って、ごく少ない)伊川谷駅で、長年営業し続けている秘訣ではなかろうか。
伊川谷には、以前取り上げた老舗の「キング」、インネパ系の「まはらじゃ」がある。「金のスプーン」と併せて、伊川谷三大カレー専門店、スパイスのトライアングルといえる・・かもしれない。
▼ 駅舎内と言っても、改札外。平日であれば、気軽に立ち寄れる。