ちょい前の話。
仕事で大阪東部に出向いた時のこと。
十分都市部と言ってよい地域ではあるが、目的地は鉄道駅から離れており、午前中にバスを乗り継いで訪れた。
昼休憩をはさむことなく、一気に仕事をまとめて片付け、やれやれと帰途に就く昼下がり。
「はら減った~」「バスで駅に戻り、その近辺で昼飯だな~」と考えながら、来た時のバス停に戻る。
バス停が近づくと、すでにバスが止まっているのが見えた。
おお、ラッキー・・と思ったのも束の間、バスはこちらをあざ笑うかのように、排ガスをひと吹きしてバス停から出て行った。
「あちゃ~、このバス停本数やたら少ないのに」とこぼしながら、バス停に駆け寄り時刻表を確認。すると、次のバスは小一時間先。ガックリ。
まるでTV番組「ローカル路線バスの旅」みたいだ。
しまったなあ。あらかじめスマホでバス時刻を確認しておくべきだった。
まあ、しゃあない。
そしてフト思った。この辺で昼飯食べるところないかな?
少し周辺を歩くと、かなり年季を感じさせる外観の喫茶店が目に入った。
コーヒー専門店ぽい店名。しかし入口横のメニューボードを見ると、カレー、あるじゃないの。
ドアを開けて入ると、中は落ち着いたインテリア。ほっとする。
ランチタイムでもないのに結構客が入っている。新聞を読むおっちゃん、おしゃべりに興じる近所のおばちゃん、まさに昔ながらの住宅地喫茶店といった雰囲気。
一番奥の席について、カレー(大)とアイスコーヒーのセットを注文。次のバスまでゆっくり過ごそう。
のんびりモードに浸っている私の前に出てきた一皿がこちら。
ルーに浮かぶ黄身は、褐色の闇夜にぼんやり浮かぶおぼろ月を想起させる。
そこそこ個性派だな。これは予想していなかった。
そして、さらに驚いたのが、ソースの小瓶も一緒に提供されたこと。
確かに、カレーにウスターソースをかけて食べる人がいることは知っている。子供のころ、じいちゃんがそうしていたのを見た記憶がある。
しかしなあ。カレーには、そもそもカレーソース(※このブログでは大雑把に「ルー」と書いているが)がかかっているではないか。
それなのに、なぜその上から、ありふれたウスターソースを足す必要があるのか。
カツカレーなら、わかるよ。ただ、普通のカレーに、ソース、必要?
子供心ながらに邪道を感じ、今に至るまでカレーにソースをかけたことはなかった。
しかし、今、ソース瓶が目の前にある。気になる。
気になりつつも、まずはそのままのカレーを半分ほど食べる。
うん、ややサラサラ系のルー、すっきりプレーンな味わい。
しかし、やはり目の前にあるソースを無視できず。つい、人生で初めてカレーにウスターソースをかけてしまった。
そして、おそるおそる口をつける。
驚いた。酸味が加わり、味がギュッと締って感じられた。おお、こんな風にかわるのか。そして、こんなに変わるものなのか。
これはこれでうまいな。
じいちゃん、邪道と決めつけてすまんかった。
今はなき祖父にあやまりつつ、さらにウスターソースを追加する私であった。