年末を目前に控えた、日曜日の昼下がり。
私は、三宮から元町方面へと、カレーを求めて歩いていた。
なにせ、今から昼飯として食べる一皿が、今年を締めくくるカレーになるだろう。
当ブログの「神戸カレー」シリーズにおいて、本年ラストを飾るにふさわしいカレー店はいずこにありや。
忘れえぬインパクトを与える店舗
あるいは、これぞ神戸カレーといえるような一皿
そんなカレーに出会いたいものだ・・
そんなことを考えつつ、JR元町駅のあたりから、山の手方へと歩を進める。
あまりなじみのないエリアだが、スマホ地図によれば、こちら方面にもいくつかカレー店があるようだ。
ブラブラと坂を上り下りしているうちに、花隈城跡のあたりに出てきた。
城跡の石垣を右手に見ながら坂を下る途中、そのカレー店に遭遇した。
はじめはカレー店と思えなかったが、小さな看板にはしっかり「curry 味善 mizen」と書かれている。
でも、このクラシカル感満点の風格からして、お高いんじゃないの?
そう思って扉横のメニューを見ると、筆頭に「スペシャルサラダと特製ビーフカレー」1,780円とある。
ふほ。なかなかのお値段。
その次のメニューは「ミニサラダとセレクトカレー」1,080円か(地鶏手羽先か、ポークヒレを選べる)。
迷ったが、今回は分相応に後者のセレクトカレーを選ぶことにした。
さて、引き戸を開けると、そこには店内空間いっぱいに広がる木製の円形テーブル(正確には向かい合わせの半円形のテーブル二つ)。その中央には枯れ林をモチーフとした生け花(?)が配されている。
テーブル上には緋色のランチョンマット。折りたたまれた紙ナプキン。そしてスプーン、フォーク、ナイフが、ダックスフントをイメージしたかわいいレストに置かれている。
わびさびと、華やかさが同居した、こだわりを感じるコーディネートだ。
セレクトカレーのポークヒレを注文し、待つ間、テーブル上に置かれていた「神戸と洋食」という本をパラパラ。お店が取り上げられているのかな?
やはり、お店に関する記事あり。目を引いたのが「クミンなどのインド系香辛料は使わない」という意味の一文。これはちょっと気になる。
そうするうちに「サラダを先にお召し上がりください」と、前菜のようにサラダが出てきた。
サラダを食べ終えたころにカレーが出てきた。おっ、カレーポット入りだぞ。
しかし、ルーはあらかじめごはんにかけてある。不思議に思っていると「同じカレーソースです」とのこと。足りなかったらかける、ということのようだ。
付け合わせとして供されたラッキョウと福神漬けを脇に配して、カレーとごはんを一口。
あっさり系でやさしい味わい。
スパイシーさはほとんど感じない。
その代わりに、しっかりと煮込まれたうまみが特徴。
しっかり下味のついたポークがルーの下に幾つも並んでいる。
さらに、しめじ、そしてズッキーニも!
このカレーは「欧風カレー」ではない。洋食そのものといえる。
先ほど覗いた本によると、このお店のルーツは、神戸の老舗洋食店だそうな。
明治時代より、ヨーロッパ航路の起点として発展した港町、神戸。
そこから花開いた欧州文化を独自に引き継ぐ、洋食スタイルのカレーといえるかもしれない。
今年の「神戸カレー」記事を締めくくるにふさわしいお店に出会えて、満足。