母の葬儀を終えて、2日後のこと。
ちょっとした相続手続きがらみの用件で、電車で魚崎近辺に出かけた。
忌引き休暇はこの日まで。明日からは日常に戻らねばならない。
とはいえ、肉親を失った虚脱感はすぐに消えるわけもなく、気持ちは上の空。
こんな状態で、明日から仕事に戻れるのだろうか・・・そんなことをぼんやり考えているうちに、正午過ぎ、阪神青木駅(「おおぎ」と読む。魚崎駅の一つ隣)に到着。
空疎な気分を抱えつつ、駅のホームに降り立つ。
こんな精神状態でも、しっかりハラは減る。
すこしでも日常の気分を取り戻すために、カレーを食べるとするか。
スマホを取り出し、青木駅付近のカレーを検索。すると「ハンとん亭」なるお店がヒットした。
カツカレー推しのコメントも見受けられる。よし、ここで食べよう。
お店は駅からほど近く、歩けばすぐに到達。住宅地の中で、ひっそりと看板を掲げていた。
店頭に掲示されたメニューは、ハンバーグやカツ系が並び、洋食系推しのお店であることが伺い知れる。
しかし、お店の入口には渋い色の暖簾がかかり、和風色が強い。老舗だが、気の置けない庶民派食堂・・そんな風に思えた。
暖簾をくぐって中に入ると、なんと近代的なタッチパネル式の券売機がお出迎え。外観とのギャップにやや戸惑う。
購入したカツカレーの食券をカウンター越しに手渡した後、ゆったりしたテーブル席で、待つことしばし。カツカレーのお出まし。
なかなかに皿がデカいぞ。
そして、皿からこぼれんばかりの、タプタプなルーが「早く食べて」と言わんばかり。
ご飯の上に鎮座するトンカツは、なかなかのボリューム。
いかにもサックリ揚がっていそうなコロモの上に、くたっとした玉ねぎと、小さくサイコロ状にカットされた人参がこしかけ、こちらの食い気を誘う。
はやるこころを抑えて、まずはルーとごはんのみで一口。
ルーは比較的さらさらしており、味もあっさりめ。カツを引き立てる味付けと見た。
カツは、コロモのとげとげしさを、ルーが適度にしんなりさせて、イイ感じ。
ごはんとあわせてカツをほおばり、グイグイ食べ進む。
入口付近の特設テーブルには、おかわり自由表示のある炊飯器が置かれている。カレーでもごはんお代わりしていいのかな?気になる。
炊飯器を気にしつつも、食べ終えたころには満腹感が強く、結局おかわりは断念。
腹が満たされるとともに、当初の空疎な気持ちは幾分和らいだ気がした。
カレーのおかげで、明日からなんとか日常に戻れそうだ。